酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
食後のお茶が運ばれ、プリンのつややかな表面にスプーンを入れながら、瀬戸がぽつりと呟いた。
「もう一つ、言っておきたいことがあります」

奈緒はプリンを口に運びかけた手を止めて、瀬戸の顔を見る。

「風邪引いてるのに無理して仕事に行くのも」
「ひとりで抱え込んで泣くのも」
「他の警察官に笑いかけるのも——全部、禁止です」

奈緒は一瞬ぽかんとして、それから小さく吹き出した。
「……意外と、独占欲すごいタイプなんですね」

瀬戸はなにも否定せず、代わりにすっと小指を差し出した。

「約束してください。破ったら、どうなるかわかってますね?」

その仕草があまりに真剣で、でも少しおかしくて、奈緒は笑いながら小指を絡めた。

「……どうなるんですか?」

そう聞くと、瀬戸は意味ありげに眉を上げて、口元だけでにやりと笑った。

「それは、破った時のお楽しみです」

奈緒は、ふいに胸が熱くなるのを感じた。

この人、今まで見たことない顔する——と、心の奥がくすぐられるようだった。

「……気になるから、破っちゃおうかな」

挑発するように言ってみると、瀬戸は「ん?」とだけ返して、ほんのわずかに身を乗り出した。

その目は、穏やかで優しいはずなのに、なぜか息を詰まらせるような熱を帯びている。

奈緒は一瞬で火照って、慌ててプリンに視線を落とした。

スプーンの先が揺れている。

自分の指が震えているからだ。

「……反則だ」
誰にともなく、そう呟いていた。
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