酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
メニューを手に取った奈緒が、お酒のページを開こうとすると、
瀬戸はすかさず手を伸ばしてそのページを閉じた。

「お酒はダメですよ」と、静かに言う声には、どこか断ち切るような優しさがあった。
奈緒が驚いて顔を上げると、瀬戸はニッと口角を上げて、耳元にそっと顔を近づけた。

「今日は、酔ってない奈緒を楽しみたいんだよね」

低く甘く囁かれた声に、奈緒の肩がビクリと震えた。
鼓膜の奥にまで響いて、体温が一気に跳ね上がる。

その反応を見て、瀬戸は目を細めて満足そうに笑った。
「反応、良すぎです」

「意地悪すぎると思う……」と奈緒は顔を赤らめながら小さく呟く。

「じゃあ、瀬戸さんのおすすめで」と言うと、
「はい、素直でよろしい」と微笑む。

やっぱり不器用な人なんだと思っていたのに、こうして隣にいる瀬戸はやたらと手慣れて見える。

「なんか、瀬戸さん、イメージと違いました」
「ほう、どんなイメージでした?」

「もうちょっと、不器用で、照れ屋で……」

瀬戸はわざとらしく眉を寄せて考え込むふりをしてから、
「……なるほど。でも、好きな人には頑張れるタイプなんですよ」とさらりと返した。

その“好きな人”のところで一瞬視線が奈緒を掠めたのを、奈緒は見逃さなかった。
一気に鼓動が跳ねる。

「頑張られすぎると、私が……困ります」

「何に?」と瀬戸がすかさず聞き返す。

「……落ち着かなくなります……」と奈緒はぎゅっと手を握って答えた。

瀬戸はにっこり笑って、そっと奈緒の手を包み込んだ。
「じゃあ、困らせるのが今日の目標ってことで」

奈緒は、これはもう完全に負け戦だ、と思いながらも、どこか嬉しそうに頬を染めていた。
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