酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
目まぐるしく日々は過ぎていった。

新しい部署に慣れるのに必死な平日、気づけば二度目の週末がやって来ていた。

平日はなかなかデートという形にはならなかったけれど、仕事帰りに待ち合わせて一緒に夕食を取ったり、互いの家でおうちご飯をしたり。

そんな何気ない時間に、奈緒は確かに「幸せ」を重ねていた。

土曜日。
午後六時を少し過ぎた頃、奈緒のマンションのインターホンが鳴った。

ワンピースの裾を整えてドアを開けると、拓真が柔らかく笑って立っていた。

「こんばんは、お姫様のお迎えに参りました」

少しおどけた口調に、奈緒はふっと笑いながら「はい、ありがとうございます」と小さくお辞儀をする。

エントランスを出たところで自然と手を繋ぎ、並んで歩く。
春の空気は柔らかく、手のひらから伝わる体温が心地よかった。

この日のディナーは、予約していたカジュアルなビストロ。
開放感のある店内で、タパスを少しずつシェアして食べた。

「このオリーブ美味しい。ワイン飲みたくなるけど、今日は我慢」

奈緒が目を細めてつぶやくと、拓真は静かに笑った。

「偉い。じゃあ、帰ったらご褒美あげようか」

その低い声に思わず赤くなりかけた頬を、ワイン色の水でごまかす。
こんなふうに、何でもない会話がいちいち嬉しい。

食事の後は、メインイベント。
夜空を彩るドローンショー。

会場となる広場へ向かう道すがら、すれ違うカップルや家族連れがみな、どこか浮き足立っていた。

会場に着いた頃には、辺りはすっかり暗くなり、地面にはシートを敷いて座る人々の姿がちらほら。
二人は少し離れたベンチに腰を下ろした。

「寒くない?」
拓真がそう言って自分のジャケットを肩にかけてくれた。
奈緒は黙ってうなずき、その厚みの中に彼の体温を感じた。

やがて、ゆっくりと音楽が流れ出し、光の粒が空へ舞い上がった。

無数のドローンが夜空に星座を描き、花を咲かせ、物語のように移り変わっていく。

「きれい……」

奈緒が小さく漏らすと、横でじっとショーを見ていた拓真が、ふと視線を落とした。

「うん、綺麗」

でも彼が見ていたのは、空ではなく、横顔を光に照らされた奈緒だった。

奈緒がそれに気づいて顔を向けると、拓真はいたずらっぽく目を細めた。

「ねぇ、空とどっちが綺麗?」
「んー……」

拓真は数秒考えたふりをして、いたずらっぽく笑った。

「空」
「ひどい」

でもその返しすら嬉しそうに受け止めて、拓真は指先を絡めるように奈緒の手を握った。

夜風の中、二人は寄り添いながら、静かに光の舞いを見上げていた。

世界の喧騒から少しだけ離れた場所で。
穏やかで甘い時間が、静かに流れていた。
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