酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
しん、と静まり返った部屋に、互いの呼吸音だけが微かに響いていた。

奈緒は拓真の腕の中にいた。

熱を交わしたばかりの身体は、まだどこか火照っていて、心臓の鼓動も完全には落ち着いていない。

でもそのすべてが、心地よかった。

拓真の胸に頬を寄せると、規則的な心音がすぐそばで響く。

それを聞いているだけで、自分が生きていること、自分がこの人に受け入れられたことを、じんわりと実感できた。

「……大丈夫だった?」

囁くような声で、拓真が聞いてくる。
奈緒はゆっくりと頷いて、彼の胸元に頬をすり寄せた。

「うん……すごく、幸せだった」
声にまだ少し余韻が残る。

目を閉じれば、さっきまでの肌の熱や息遣いが、鮮やかに思い出される。

「俺も……奈緒が愛しくて、どうしようもなかった」

拓真の腕が少し強く奈緒を抱きしめる。

その温もりに包まれて、奈緒の心が深くほどけていく。

過去にこんなふうに、誰かと体を重ねたあとで、心まで満たされたことがあっただろうか。

何かを埋めるためではなく、何かを与えるためでもなく――

ただ、お互いのすべてを分かち合いたいという気持ちだけで、抱き合えたのは初めてだった。

「……ずっと、一緒がいい」
奈緒の声は小さく、けれど確かだった。

拓真はその言葉にゆっくりと頷き、額を奈緒の額にそっと合わせた。

まぶたを閉じると、互いの吐息が静かに重なる。

時間が止まったような感覚。

夜の静けさの中に、二人だけの時間が溶けていく。

「明日も、明後日も……その先も、奈緒の隣にいたい」
そう言った彼の声が、心の奥に柔らかく沁みて、奈緒は思わず涙をこぼした。

「……そんなふうに思ってもらえるなんて、信じられないくらい、嬉しい」

拓真がそっと指先で奈緒の頬をなぞり、流れた涙を拭う。

何も言わずに、ただ抱きしめる――その行為に、言葉以上の想いが詰まっていた。

カーテンの隙間から、夜の外気がひんやりと流れ込み、ほんの少し肌を撫でた。

でも寒さは感じなかった。
彼の腕の中は、十分すぎるほど温かかったから。

眠気がじんわりと身体を包み始める。

奈緒は拓真の胸に顔をうずめながら、ゆっくりとまぶたを閉じた。

「おやすみ……拓真くん」
「おやすみ、奈緒」

ぴたりと重ねられた手と手。

そのぬくもりを確かめ合いながら、二人は静かに眠りへと落ちていった。

夜が、優しく包み込む。
愛された余韻が、まだ身体の奥でふんわりと灯り続けていた――。
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