酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
朝のキッチンには、目玉焼きがじゅうっと音を立てる音と、トースターのタイマーが鳴る音が心地よく響いていた。

奈緒は、フライパンを器用に扱う拓真の姿を横目に見ながら、ふと思い出したように口を開く。

「ねえ、そういえば……交番密着取材のとき、拓真くん、毎日お弁当持ってきてたよね」

拓真は手を止めずに、「うん、持ってってたね」と、あっさり答えた。

奈緒は少しだけ視線を落として、小さな声で聞く。
「……あれ、本当に全部自分で作ってたの?」

その問いに、拓真はフライパンを火から下ろしながら、笑みを浮かべる。
「うん。慣れればどうってことないよ」

奈緒は胸の奥がちくりとするのを感じた。
あの頃、彼女か奥さんが作ってると思い込んで、勝手にモヤモヤしていた。

「……女性に作ってもらってるって、不安になったんでしょ?」

そう言いながら、そっぽを向いた奈緒に、拓真は一歩近づき、頬にそっとキスを落とす。

「ふふ。やきもち焼きですね、奈緒ちゃんは」

奈緒はむっとして顔を赤らめながら言い返す。
「違うし」

「違くないでしょ?」
拓真はにやりと笑って、奈緒の額に額を寄せる。

「素直になりなさい」

そう言って、優しく頭をポンポンと撫でる。

奈緒はその手の感触に目を細めながら、心のどこかで思った。

——やっぱり、この人の言うことはちゃんと聞いておこう。
怒らせたくないからじゃなくて、好きだから。
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