酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
ご飯を食べ終えた後、二人は自然とソファへ移動し、ぴったりと寄り添って座った。

拓真の肩にもたれながら、奈緒は目を閉じて深く息を吐く。

しばらくの静寂のあと、ふと思い出したように口を開いた。

「ねえ、そういえばね……」

拓真が視線を向ける。

奈緒は少し照れたように笑って、膝の上で指をもじもじと絡める。

「実は、拓真くんの名刺が欲しいんだけど」

拓真は一瞬きょとんとしながらも、「前あげたでしょ?」と応じた。

奈緒はこくりと頷いて、少し気まずそうに視線をそらす。

「うん、そうなんだけど……あのとき、プレゼンで負けて密着取材から外れた時……もう会えないなら、忘れようって思って……捨てちゃったの」

拓真の目が細くなり、眉間にわずかに皺が寄る。

「そんなことしてたの? 俺の知らないところで」

そう言いながら、奈緒の耳たぶにそっと触れ、指が首筋をなぞる。

「ひゃっ……!」

奈緒はびくりと身をすくめ、くすぐったそうに体をよじる。

拓真は低く、意地悪く囁いた。

「罰ね。勝手に俺のこと忘れようとした」

「ご、ごめんなさい、ごめんなさいっ」

奈緒は慌てて謝る。

すると拓真はバッグから名刺入れを取り出し、一枚抜いて奈緒に差し出した。

「……はい。やるよ、特別に」

奈緒は素直に受け取ると、印字された文字をじっと見つめる。

「警視庁本部 生活安全総務課 警部補 瀬戸拓真」

知っていたはずの肩書き。でも、こうして改めて手元の名刺で見ると、胸の奥がじんわりと熱くなる。

「……うん。やっぱりかっこいい」

名刺を嬉しそうに眺めている奈緒に、拓真がぼそりと呟いた。

「名刺見てないで、本物見れば?」

そして、指先で顎をくいっと引き寄せ、そのままそっとキスを落とした。
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