酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
平日の朝。
奈緒は玄関先で靴を履きながら、「一緒に行こうか」と微笑んだ拓真を見上げた。

「うん、途中まで一緒に歩けるの嬉しい」
並んで歩く道は、いつもよりやわらかい光に包まれているように感じた。

駅に着き、満員電車に乗り込むと、拓真はさりげなく奈緒を壁際に立たせ、自分の体で彼女を守るように立った。

肩が触れるほどの距離で、言葉はなくとも心が穏やかになる。
こんなにも優しくて、こんなにも幸せな通勤があっただろうか。

幸せすぎて、少し怖くなるほどだった。

電車を降りて、改札を抜けると、霞ヶ関の風が二人を包む。
会社の方向が分かれる地点で、ふと視線を交わす。

「じゃあ、いってらっしゃい」
「奈緒も、いってらっしゃい」

微笑み合って、別々の方向へ歩き出す。
けれど背中には、まだ互いの温もりが残っていた。
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