酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
瀬戸と奈緒が机を挟んで真面目に話をしている、その数メートル奥。
掲示板の前に集まっていた川合と若手の警察官二人が、声をひそめながらも小さな笑いを含んだ会話を交わしていた。

「なぁなぁ、あの人って、瀬戸さんがこの前保護してた泥酔の――」

「……やっぱそうっすよね?俺、瀬戸さんが水買ってたの見たっすもん、あの日」

川合は口元を隠しながら、ちらりと二人の様子に目をやった。
「うわー、こりゃ気まずいなぁ。水、飲むのもトラウマなるやつ」

「でも、あの記者さん、めっちゃ気にしてる感じっすね。顔、真っ赤っすよ」

「そりゃそうでしょ。瀬戸さんに“結婚して!”って叫んだんだぜ?交番の中で。記録残ってないのが奇跡だよ」

若手の一人が笑いを噛み殺しながら肩を震わせた。
川合は小さく咳払いをして、ふざけすぎだぞ、と眉をしかめるふりをするが、口角は明らかに緩んでいる。

「でも、瀬戸もなんだかんだで無視してないとこが…ねぇ?」

「っすね。“知ってます”って、めっちゃ静かな殺し文句でしたよね、あれ」

「おーい、見すぎるな、見すぎるな。瀬戸に睨まれんぞ」

そう言いながらも、誰も視線を外そうとはしなかった。

ただの平日の午後。
取材という真面目な名目の向こうで、何かが確実に動いている気配に、彼らの好奇心は止められなかった。
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