酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
「この資料、コピーして渡しますんで」

そう言って瀬戸は資料の束を手に立ち上がると、交番の奥にあるコピー機へ向かった。
その先には、先ほどからこそこそと話し込んでいた川合と若手の巡査たちの姿がある。
機械の前まで来た瀬戸は、資料をセットしながら無言のまま数秒、彼らを一瞥した。

川合が「……お、コピー?」ととぼけたように言うと、瀬戸は低い声で、

「ヒマなんですか?」

と一言。
淡々とした口調だったが、その視線は明らかに「全部聞こえてるぞ」と言っていた。

「やーだなぁ、ちょっと情報交換ですよ、ね?」
と若手の一人が肩をすくめ、川合はわざとらしく咳払いをしてから口元に手を当てた。

「まぁまぁ。でも、あの“知ってます”はよかったな。なぁ?」

「名台詞っすよ、“知ってます”って。交番ラブストーリー開幕っすね」

「……ほんと、うるさいから」

瀬戸はため息をひとつつくと、コピー機の「スタート」ボタンを無言で押した。
機械が動き出すと、川合は瀬戸の隣に立って、肘でそっと突く。

「でも、嫌な感じはしてなかったろ?お前、顔に出てたぞ」

「出てないですよ」

「出てた。鼻の横、ちょっと笑ってた」

瀬戸はそっぽを向きながら、コピーを受け取ると「はい、仕事戻る」とだけ言って、そのまま奈緒のもとへ戻っていった。

川合は肩をすくめながら、後ろ姿に小さくつぶやいた。

「ふーん、照れてるじゃん、瀬戸」
< 27 / 204 >

この作品をシェア

pagetop