酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
(ほんと、懲りない人だな)

奈緒がまた赤くなって頭を下げるのを見ながら、瀬戸は一瞬だけ目を伏せて笑った。
酔って路上で寝ていた女の子とは思えないほど、今は礼儀正しくて、一生懸命で。
なのに、ほんの少し突くだけで、すぐ顔を赤くして挙動不審になる。

(……まぁ、可愛いっちゃ可愛いけど)

そんな感情が、心のどこかからふっと顔を出す。
警察官として、特別な感情は持たないようにしている。
それでも――

(ああいうタイプ、危なっかしくて放っておけない)

あの夜のことを思い出す。素直で、人懐っこくて、ふにゃっと笑って「好き」と言った彼女。
あれが酒のせいだとしても、ふとした瞬間に浮かんでしまうのはどうしようもなかった。

「……いつまで頭、下げてるんですか。そんなに謝られても困りますよ」

瀬戸は、ほんの少しだけ意地悪な笑みを浮かべる。
奈緒が顔を上げると、目が合った。

「まぁ……あんな酔い方、記録更新かもしれませんね。少なくとも、俺の担当範囲では」

「っ……!」
奈緒がぷるぷる震えながら口を結ぶ。

「でも、無線にはもう手を出さないでくださいね。あれ、普通に器物損壊で書類送検される可能性あるんで」

「そ、そんなつもりじゃ……!」

「冗談ですよ」

冗談なのに、言い方が真顔すぎる。
奈緒の混乱した表情が、瀬戸には少しだけ面白かった。

(ほんとに……危なっかしい人だ)

冗談のつもりだったのに、つい口調がきつくなってしまうのは、警察官としての癖か、それとも――
守ってやりたいと、どこかで思っている証拠なのかもしれなかった。

「……まぁ、でも」

ふっと、ほんの少しだけ声のトーンを和らげて言葉を続ける。

「取材、大変なんですよね。見ててわかります。ちゃんと向き合ってるの、伝わってきますよ」

奈緒が少し驚いたように、まばたきをした。

「だから……あまり無理はしないでください。誰にでも、うまくいかない日はありますから」

警察官としてではなく、人として。
そう伝えるには、これが精一杯だった。

「……ありがとうございます」

奈緒が、かすれた声で言う。
その目はほんの少し潤んでいて、瀬戸はまた視線を逸らした。
だけど、それでも――放っておけなかった。
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