酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
「なあ瀬戸、お前、彼女いんの?」

急に投げられたその質問に、瀬戸は資料の整理をしていた手を止めた。

「……なんで今、それ聞くんですか」

眉ひとつ動かさずに答える瀬戸に、川合はニヤニヤと笑みを深めた。

「いやさ、フリーなら結婚してあげなよ。水原さんと」

「は?」

完全に想定外だった返しに、瀬戸は短く息を吐いた。
その隣で奈緒は「っ……!」と声にならない悲鳴をあげる。

「ちょ、ちょっと、ほんとに……やめてください、ほんとすみません、すみません!」

立ち上がりかけて頭を下げ、慌てふためく奈緒。
真っ赤な顔は耳の先まで染まり、もはや謝罪というよりパニックに近かった。

「川合さん、冗談にしても……!」
奈緒が声を裏返らせたそのとき。

瀬戸と奈緒の視線がふと交わる。
お互い、咄嗟に目をそらせず、そのまま数秒の沈黙が流れる。
それから奈緒が、慌てて俯いた。頬はまるで熟したトマトのように真っ赤だ。

「……まじでおもろいなこれ」

「かわいすぎだろ」

「お似合いじゃん!」

川合と、他の交番勤務の警察官たちが、交番内で一斉に爆笑する。
雑然とした笑い声に包まれる中で、瀬戸はそっとため息をつき、奈緒は完全に意識を失いかけていた。
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