酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
帰宅したのは、22時を少し回った頃だった。
靴を脱いで、玄関にカバンを置き、そのままソファに沈み込む。

「……疲れた……」

居酒屋ではそれなりに盛り上がっていたけれど、頭の片隅ではずっと、あの交番での再会がこだましていた。

「あぁぁあぁ……ほんとに、なんであそこで再会するかな……」

奈緒は自分の顔を両手で覆いながら、ソファに寝転んだ。

「しかも、よりによって……あの発言……『こっちのお巡りさんがいい』って……」

声に出してみて、改めて自分の過去の暴言を思い出す。

「死ぬほど恥ずかしい……もう絶対、飲まない……」

ごろりと寝返りを打って、視線の先に置かれたカバンを見る。
交番で交換した名刺が、ファイルの間にあるはずだった。

「……瀬戸 拓真さん、ね」

名前をつぶやくだけで、なぜか胸がざわつく。
名前すら知らなかった相手の名を、今でははっきりと認識している。

「冷たそうで、意地悪で……でも、真面目で……」

資料を丁寧に揃えてくれたこと。
ふざけた川合の発言に、静かにため息をついたこと。
記憶の中の一つ一つが、妙に鮮やかだった。

「ちょっとだけ、気になるのかな……」

ぼそっとつぶやくと、また両手で顔を覆う。

「ダメダメ!そんなの、記者として最悪!公私混同!」

そう言い聞かせても、胸の奥のモヤモヤは消えてくれなかった。

「……でも、嫌な感じは、しなかった」

つぶやいたその言葉が、静かな部屋にぽつりと落ちる。

奈緒は小さくため息をつくと、身体を起こしてシャワーの支度に向かった。
鏡の中の自分は、頬がほんのり赤かった。
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