酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
取材を終えたあと、奈緒と花夏は交番の外に出た。

空は薄曇りで、春の午後にしては少しひんやりとした風が吹いていた。

通学帰りの小学生たちがランドセルを揺らしながら、向こうの横断歩道を渡っていく。

奈緒は、さっきの警察官の言葉が胸に残っていた。
「地域のつながりが、子どもたちの命を守るんです」
その言葉は、報道の役割を考えさせる重みがあった。

子どもたちの笑い声が、遠ざかっていく。
あの日あの時、誰かがそばにいたら防げたかもしれない事件。

誰かが見ていれば、声をかけていれば――そんな「もしも」が、どこかで何度も繰り返されている。

「記者って、こういうところをちゃんと伝える仕事なんだよな」
奈緒は心の中でつぶやいた。

自分が報じることで、誰かの心に小さな注意が生まれればいい。

町内会や防犯パトロールなんて、地味で取り上げられにくい。
でもその地味さが、確かに誰かを守っている。

ふと、近くの家の前で立ち話をしている年配の女性たちの姿が目に入った。

昔ながらの井戸端会議。
そういう光景も、最近じゃなかなか見かけなくなった。

「ねえ、少し話聞いてみようか」
奈緒が花夏にそう言うと、彼女はにっと笑ってうなずいた。

奈緒の中に、ひとつ芯のような思いが芽生えていた。
「私は、ちゃんと伝えたい」
小さくて、でも確かに必要な声を、記事にしていきたいと。
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