酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
奈緒と花夏は、近くで立ち話をしていた二人の女性に声をかけた。

「すみません、私たち新聞社の者なんですが、少しお話を伺ってもいいですか?」

年配の女性たちは、驚いたように顔を見合わせたあと、「まあ、いいですよ」と頷いてくれた。

「この辺りって、最近は町内会の活動とかどうですか?」
奈緒がそう尋ねると、一人の女性が苦笑しながら答えた。

「昔はもっと頻繁に回覧板も回ったし、防犯パトロールもしてたんですけどねぇ」

「最近は若い人がみんな忙しいから、集まって何かするってのがなかなか…」

「でも、事件があってからはやっぱり怖くてね。夜はあんまり出歩かなくなったわ」

「子どもがいる家庭なんかは、特に神経質になってるみたい」

奈緒はメモを取りながら、何度も頷いた。
言葉の一つひとつが、今の町の空気をそのまま映しているようだった。

「町内会って、やっぱり大事なんですね」
奈緒の問いに、女性たちは同時にうなずいた。

「何かあったときに、“お隣さん”って思える人がいるかどうかで、安心感が違いますよ」

「知らない人ばかりじゃ、いざって時に声も出せないでしょう?」

花夏が、何気なく横から聞いた。
「この辺に、交番のお巡りさんってよく顔出してくれますか?」

「ええ、こないだも新しいお巡りさんが挨拶にきてくれてね。やっぱり顔を知ってると安心するわよ」

「何かあるとすぐ聞けるし、頼りにしてるわ」

奈緒はメモ帳を閉じながら、胸の中にじわっと温かいものが広がるのを感じた。

顔の見える関係、声のかけられる距離。
それが、人を守る強さになる。

花夏が、「いい話が聞けたね」と言い、奈緒も静かに頷いた。

地味でも、こうした積み重ねが防犯の第一歩になる。
そのことを、自分の記事で誰かに伝えられたら。

奈緒の背筋が、自然と少しだけ伸びていた。
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