酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
東京北都新聞から、一通の封筒が交番に届いた。

宛名には、「東京都新宿警察署 新宿東口交番 所長 樋口 様」と丁寧な書式で印刷されている。

昼の交替時間、所長の樋口が封を切りながら言った。
「みんな、先日の取材の記事が届いたぞ。興味あるやつは見とけ」

そう言って、クリアファイルに入った紙面を事務机の中央に置いた。

瀬戸はちょうど報告書の処理を終えたところだった。
ふと手を止め、机の上のそれに目をやる。

「お、これあれじゃん、水原さんのやつ」
川合が気づいて先に手を伸ばす。

「どれどれ」
二人並んで立ち、記事を覗き込む。

紙面には、あの時の真剣なまなざしを思い出させるような、丁寧に構成された文章が並んでいた。

町内会と警察の連携による防犯活動の現状。

地域住民の声。
そして、そこにあるべき記者の視点と、伝えたいという強い意志。

瀬戸は黙って、じっと読み進める。
文章の合間から、奈緒の声が聞こえてくるような気がした。

「……まじめだな、あの人」
川合がぽつりと言った。

「はい」
瀬戸も短く返す。

紙面の最後には、記者名。
「東京北都新聞 社会部 水原奈緒」

その名前を見て、瀬戸は小さく笑った。
「ちゃんと、仕事してるんだな」

「なにそれ、ちょっと感心してる?」
川合が肘で突いてきた。

「……いえ別に」
そう言いながら、瀬戸は視線をそらした。

けれどその目の奥には、記事の余韻が、静かに灯っていた。
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