酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
昼過ぎ、東京北都新聞社会部の会議室。
編集デスクの狩野が、資料の束をトンと机に揃え、目の前のふたりを見た。

「水原、高木」
低く落ち着いた声に、奈緒と花夏は背筋を伸ばす。

「いい記事だった。正直、想像以上だ」

狩野は記事のコピーを手に取り、軽く指で叩いた。

「特に、町内会と警察との連携に焦点を当てた構成がいい。堅いテーマなのに、読者の関心を引く語り口になっている」

奈緒は思わず小さく息を飲む。
花夏が横で微笑んだ。

「事件の背景にあった地域の結びつきの希薄化。そこから取材対象が何を感じて、どう行動したか。記者の視点がブレてない」

狩野は続ける。

「それと……写真じゃなく、文章だけで現場の雰囲気をここまで伝えたのは見事だ。説教臭くもなく、情に偏りすぎてもいない」

奈緒の胸の奥がじんわりと熱くなる。
頑張ってよかった――その思いが、静かに波紋のように広がっていく。

「社会部としても、こういう記事はもっと打ち出していきたい。地域の防犯意識、読者の意識を変える力がある。これが“伝える”ってことだ」

狩野は満足げに頷き、穏やかな口調で締めくくった。

「次の案件も、引き続き頼むぞ。いいコンビだ」

奈緒と花夏は顔を見合わせ、同時に頭を下げた。
「ありがとうございます」

ふたりの胸に、記者としての自信と新たな火が灯っていた。
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