酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜

恋の火種はまだ、くすぶってる

暑い夏の日。
世間では「熱中症で百何十人が病院に搬送された」などというニュースがひっきりなしに流れていた。

新聞社では、地域の運動会や夏祭りの取材が立て込み、記者たちは朝から外回りに追われていた。

ローカルな話題を丁寧に拾い、ひとつひとつ記事に仕上げていく日々。

一息ついたランチタイム。

奈緒と花夏は、冷房の効いた社内食堂で冷やし中華を啜っていた。

花夏は午前中、校庭で開かれた運動会の取材に出ており、肌がわずかに赤くなっていた。

「おつかれ。焦げてるじゃん、花夏」
奈緒が笑いながら冷たいお茶を渡すと、
「マジで干からびるかと思った」と花夏が返した。

冷やし中華の上に乗ったキュウリの千切りをつまみながら、花夏が言う。
「あの後さ、奈緒のお気に入りイケメンお巡りさんとは会ったの?」

奈緒は一瞬咳き込みそうになりながら、首を振った。
「会ってないよ。あれ以上接点ないし」

「もったいないなー。あんた、元彼の愚痴を上司に聞かせながら泣いた頃からしばらくだよ」

「ちょっとやめて。その黒歴史掘り返すの禁止」
奈緒は苦笑しながら箸を置き、額に手を当てた。

「いやいや、あれは歴史じゃなくて伝説級だったよ」
「お願いだから静かに……」

社食のガラス窓越しに見える真夏の陽射しが、会話の間を白く照らしていた。
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