酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
しばらくのあいだ、誰も手を挙げなかった。
静かな沈黙が流れ、やがて自然と会議室の視線が奈緒と花夏のもとに集まり始めた。

狩野はその空気を察したように言葉を添える。
「水原と高木以外でも構わない。もちろん、二人のうちどちらかでもいいんだぞ」

その瞬間、花夏がニヤリと笑って奈緒の方を向いた。
「奈緒、やりなよ。警察と連携するなら、あんたのお気に入りイケメン警察官ともまた接点できるかもよ」

奈緒は思わず目を丸くし、「ちょっと、やめてよ」と小声で反応する。
そして一拍おいて、やや不安げに口を開いた。
「でも……私にできるかな」

花夏はすかさず奈緒の手を取り、にやにやしながら勝手に手を挙げる。
「水原さんがやりたいそうです!」

「ちょっと花夏!」と奈緒は慌てて言うが、すでに狩野が反応していた。

「お、そうか。水原は新宿の交番の記事でもすごく良かったからな。適任だと思うよ、頼んだ」

狩野の言葉に、会議室に自然と拍手が湧き起こる。

周囲の同僚たちが「お願いしますね」「頑張って」と声をかけながら、自席へ戻っていった。

奈緒は驚きと戸惑いを隠せないまま、花夏に目をやる。
花夏はいたずらっぽくウィンクして見せた。
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