酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
奈緒は、自宅のダイニングテーブルに広げた紙面をじっと見つめていた。

「防犯の“最前線”、見えてますか?」

自分が書いた見出しが、まるで他人の言葉のように感じられる。

ソファに身を沈め、ため息をひとつついた。
冷房の風がカーテンを揺らす音だけが静かに響く。

なんで、仕事で一度関わっただけの人に、こんなに引きずられているんだろう。

記者としてのプライド、使命感、それで十分なはずなのに。

なのに――
この記事一枚が、まだどこかで彼と繋がっているような気がしてしまう。

見返すたびに思い出す、交番の空気。

ペットボトルの水。

呆れたような笑い声。

また、会いたい。
ほんの一瞬でいい、あの人と目が合ったあの時間を、もう一度。

そんな気持ちが、心の中で静かに輪郭を持ち始めていた。
< 62 / 204 >

この作品をシェア

pagetop