酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
「はい、立って」
瀬戸は最低限の接触で、彼女の腕を指先で支えた。
ふらふらで、まともに立てる様子はない。
予想はしていた。
……だが。

「おまわりさんが支えてくれないと、立てない〜!」

なんだこいつ。

思わず顔が引きつりそうになるのをこらえた。
表情には出さない。
出してはいけない。
警察官は、酔っ払いの一人や二人に感情を持ち込むなと、何度も言われてきた。

マニュアル通りに、淡々と。
声を荒げない。
必要以上に手を出さない。
公務中の一切に、感情を交えるな。

それが、瀬戸拓真という男の、現場での流儀だった。

けれど。

「おまわりさん、かっこいい」と無防備に笑われ、
「けち」と呟かれ、
「おまわりさんつめたぁーい」とむくれられて、
挙句の果てに「立てない〜!」と子どものようにごねられると、

……正直、めんどくせぇな、と心の中でだけ毒づいた。

それでも表情は変えず、
「立てますか?」と、もう一度だけ静かに尋ねる。

この手のタイプは、なまじ甘くすると調子に乗る。
かといって冷たくすると、今度は泣き出す。

慣れてる。
何度も対応してきた。
でも、こいつは――ちょっとだけ、タチが悪い。

そしてもうひとつ。
最悪なことに。

……笑顔が、妙に印象に残った。
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