酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
「交番、すぐそこなんで。ちょっと休んでいきますか」

瀬戸は短くそう言って、彼女を見下ろした。
その声には感情がほとんどない。
仕事のときの、いつものトーン。
淡々と、決して甘くない。

「……こーばん?」
彼女が、ぽかんとした顔で見上げる。
まぶたが重そうで、まっすぐ立てる気配はまるでない。

「ちょっとだけ、横になります…」
そう呟いたあと、ぐらっと身体が揺れた。

「危ない」

瀬戸は反射的に、腕を軽く支える。
すると――

「わっ、倒れちゃうかも〜。だから、手ぇ繋いで!」

ふらふらしながら、彼女が手を伸ばしてくる。

「繋ぎません」

瀬戸は、即答だった。
ピシャリと、はっきりと。

「え〜、けち〜」

彼女はまたむくれて、口を尖らせる。
でも、足取りはかなり怪しい。

「自分で歩けないなら、肩貸します」
「えっ、手は? 手のほうがよくない?」

「肩です」

瀬戸の返答に、一切の隙はなかった。
その無表情さが、逆に彼女のテンションをあおる。

「も〜、おまわりさん、ほんっとつめたぁ〜い……!」

そう言いながら、彼女はふらふらと瀬戸の隣について歩き出す。
ほんの数分の距離なのに、なんだかすごく長くなりそうな気がした。
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