酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
皆が会議室から退室していく中、奈緒はひとり、椅子から立ち上がれずにいた。

足に力が入らなかった。
拍手と賞賛の声がまだ耳に残っている。

「やっぱり都丸さん、すごいね」

「また取られちゃったな」

「愛さん、尊敬します」

そんな声が次々と耳に届く。
まるで、自分がここに存在していないかのような感覚だった。

自分だけが、音のない場所に取り残されたような。
失敗を恐れていたわけじゃない。

ただ、全力を尽くしたその先に、何も残らなかったという事実が、重くのしかかっていた。
その意識を引き戻したのは、花夏だった。

「奈緒、しっかりして」

隣で静かに言う声が、背中を支えた。

「やることはやった。堂々としなさい」

奈緒は、目を伏せたまま小さく息を吸った。
言葉が胸に沁みて、ようやく少しだけ体が動いた。
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