酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
奈緒は、大宮さんと星崎さんに「タクシーで会社に戻りなさい」と念を押され、言われるがままに車に揺られて会社へ戻った。
迷惑をかけてしまったなと思いながら、車窓をぼんやりと見つめる。

帰社後、取材資料と書類を整理してから、自分のデスクに突っ伏す。
全身が鉛のように重い。

(やばい……寝そう)
体力が、限界だった。

そんな奈緒の様子を知ってか知らずか、隣のデスクから狩野が声をかけてくる。

「サイバー、どうだった?」

奈緒はガバッと体を起こし、ガンガンする頭を片手で抑えながら答える。

「はい、……うまくいきました」

狩野はちらりと彼女の顔を見て、少しだけ眉を寄せた。

「昨日、早退してたけどさ……昨日より顔色悪いよ? 大丈夫?」

「あ、まあ……大丈夫……だと思います」

声はだんだんと窄まるように小さくなり、語尾が消える。
すると狩野は、ふっと息を抜くように笑って言った。

「世間、狭いと思うかもしれないけど……僕、星崎さんと知り合いでさ。さっき連絡来たんだよね」
「倒れた子、ちゃんと無事に会社戻れたか確認して、って」

一気に顔が熱くなる。

(うわ……バレてんの……)

「あ、あの……ちょっとふらついたというか……」
なんとか誤魔化そうとすると、狩野はあっさり返す。

「今朝から体調悪かったって」

(げ、そこまで……!)

恥ずかしさを隠すように、話題を逸らす。

「どうして、星崎さんと知り合いなんですか?」

「星崎さん、新宿署の捜査一課にいたとき、僕が刑事部担当の記者だったんだよね。
捜査の動向とか、いろいろ教えてもらってた。あの人、刑事課にも顔が利くから仲良くしておくといいよ。すごく面倒見のいい人だから」

「……なるほど」
確かに、あの人は話しやすい人だった。安心感があった。

(しかも……瀬戸さんと知り合い)

また瀬戸のことを考えてしまった自分に、奈緒は思わず眉をしかめた。
もうやめよう。そう何度も思ってるのに。

狩野は、そんな奈緒をちらりと見て、軽くため息をつくように言った。

「……倒れるほど体調悪いなら、早退しなさい」

そう言い残して、自分の席に戻っていった。
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