魔法使い時々王子
ニーナは、わずかに驚いた表情を浮かべた。
だが、アリスの真剣な眼差しを見つめ返すうちに、ふっと柔らかな笑みがこぼれる。

「王妃様。そこは、怒ってもよろしいところだと思いますわ。それを……まさか、謝られるとは。思いもよりませんでした」

ニーナの声は、とても穏やかだった。

アリスは少しだけ間を置き、言葉を選ぶようにしてから口を開く。

「……どうして?」

小さく息を吸う。

「私はここ数日、あなたのことを疑い続けていたわ。今日、あなたが私を庇ってくれて……とても嬉しかった」

視線を伏せ、指先をぎゅっと握る。

「本当は、他にも謝りたいことがあるの。でも……それは、できない」

アリスはセオとの結婚のことだとは、はっきりとは口にしなかった。
けれど、その沈黙が指しているものを、ニーナはすぐに理解した。

ニーナは静かに頷き、穏やかに微笑む。

「ええ。その謝罪は、聞くことはできません。ですが――」

一歩だけ、柔らかく距離を詰めて。

「王妃様のお優しいお気持ちだけ、頂戴させていただきますわ」
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