魔法使い時々王子
アリスは、ニーナと話してみて思った。
この人はとても優しく、きっと気が合っただろう、と。

――けれど。

「……私の謝罪を聞いてくださって、ありがとう。あなたとは、とても気が合うと思ったわ。でも……会うのは、これきりにしましょう」

静かに息を吐き、アリスは続ける。

「それが、お互いのためだと思うの」

ニーナは、その言葉を受け止めるように目を伏せ、そして深く頷いた。

「ええ。同感です」

少しの間を置いて、ニーナは穏やかに微笑む。

「実は私、近々王宮を去ろうと思っておりますの」

アリスは思わず目を見開いた。

「そんな……わざわざ、王宮を出なくても……」

ニーナは静かに首を振った。

「いえ。以前から考えておりました。他国に住む叔母のもとへ留学に行こうかと。新しいことに、挑戦してみたいのです」

その横顔は、迷いのない、どこか晴れやかな表情だった。
アリスは、生き生きとしたニーナの姿を見て、胸の奥が少しだけ軽くなるのを感じた。

二人はその後、たわいもない話を交わし、静かに別れた。
もちろん、セオの名が出ることは一度もなかった。

部屋を出る間際、ニーナは振り返り、そう告げた。

「王妃様のお幸せと、この国の繁栄を。心より、願っております」

アリスは、去っていくニーナの背中を、しばらくの間、見つめ続けていた。
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