魔法使い時々王子
すると、少し離れた渡り廊下に、数名の一団が歩いているのが見えた。
衣装の意匠からして、この国の者ではない。

リアンが目を細める。

「……あれ、またミロ王国からの使者よ」
「最近よく見かけるの。アリス様絡みかしら?」

シドも視線をそちらへ向けた。
数は多くないが、動きは慎重で、どこか張り詰めている。

――アリスの手紙には、特にそれらしいことは書かれていなかった。

結婚式が終わり、公務が増えたこと。
慣れない環境で戸惑いながらも、支えてくれる人がいること。
セオが誠実で、優しいこと。

そこに、不穏さを匂わせる言葉は一つもない。

「……変だな」

思わず漏れたシドの呟きに、リアンは何も言わず、ただ肩をすくめた。



その頃、アリスはアウルム図書館にいた。
高い天井と、柔らかな光に満ちた静かな空間。

長机の一角で、リトと並んで本を読んでいる。

紙をめくる音だけが、規則正しく響いていた。
アリスは文字を追いながらも、どこか集中しきれていない。

リトは何も言わず、隣で同じように頁をめくっている。
その沈黙が、今のアリスには不思議と心地よかった。
< 266 / 277 >

この作品をシェア

pagetop