魔法使い時々王子
アリスは読んでいた本から少し顔を上げ、静かに深呼吸した。

「今ね、この国の歴史を学ぶように言われていて、この本を読んでいるの。それにしても……祖国もそうだけれど、この国も幾多の困難を乗り越えてきているのね」

しみじみとそう言ってから、アリスはページを指でなぞる。

「そういえば、この時代の国王がとても有名だって書いてあるけれど、それほど昔の話でもないのよね? リトの高祖父にあたる方かしら」

リトは静かに本へ視線を落とした。

「……魔法使いだった」

短く、それだけを告げる。

「そうなの」

アリスは小さく頷いた。

「じゃあ、リトは高祖父の力を受け継いでいるのね」

リトはその言葉には答えず、ページをめくった。

少しの沈黙のあと、リトがぽつりと問いかける。

「……アリスの祖国では、魔法使いは珍しくないのか」

「そうね。数は減っているけれど、そこまで珍しい存在ではないわ。王宮には魔法大臣もいたし、弟子もいたわ。」

そう言いながら、アリスは自然と一人の人物を思い浮かべていた。

——シドのことを。
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