魔法使い時々王子
「あ、いけない。そろそろ行かないと。今夜は晩餐会があるのよ」

アリスは本を閉じ、立ち上がった。

「またね、リト」

そう言って慌ただしく図書館を後にする。
リトは何も言わず、その後ろ姿をしばらく目で追っていた。



夜になり、アリスは華やかなドレスに身を包み、ルーナと共に晩餐会の会場へ向かった。
用意された席に着き、隣に座るはずのセオを待つ。

しかしほどなくして、セオは体調が優れず、本日の晩餐会は欠席するという知らせが届いた。

「……そう」

アリスは小さく頷き、空席となった横に視線を落とす。

その時だった。

誰かが静かに椅子を引き、アリスの隣に腰を下ろした。

「……?」

顔を向けた瞬間、アリスは目を見開いた。

「リト?!」

そこには、何食わぬ顔で座るリトの姿があった。
背筋を伸ばし、いつもと変わらない涼しい表情で、平然としている。

「どうしてここに……」

言葉を失うアリスをよそに、会場がざわりと波立った。

——ざわっ。

晩餐会に集まった貴族たちが、一斉にリトへと視線を向けている。
驚き、戸惑い、そしてどこか緊張を帯びた空気。
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