魔法使い時々王子
晩餐会を終え、アリスは自室へ戻った。

ドレスを脱がせてもらいながら、先ほどの光景を思い返す。
会場で向けられた、あの不思議な視線。

(……結局、理由は分からないままね)

リトに話しかけるたび、周囲が驚いたように息を呑む。
特別なことを言った覚えはないのに。

(みんな、どうしてあんな顔をしていたのかしら……)

答えは出ないまま、アリスは小さく首を振った。

――その頃。

エレオノーラは、見舞いを名目にセオの部屋を訪れていた。

「え? リトが?」

思わず声を上げたセオは、そのまま激しく咳き込んでしまう。

「ちょっと、無理しないで」

エレオノーラは立ち上がり、セオの背中を優しくさすった。

「落ち着いて。あなたでしょう? 自分の代わりに晩餐会への出席を勧めたのは」

「……そうですけど。まさか、本当に出席してくれるとは思いませんでした」

息を整えながら、セオは尋ねる。

「様子は、どうでした?」

エレオノーラは水差しからグラスに水を注ぎ、セオに手渡した。

「それがね。あなたの奥様と、とても親しそうだったわ」

「……アリスと?!」

エレオノーラは静かに頷く。

「とても自然に話しかけていたわ。周囲が驚くほどに。
それに、リトも……アリスには心を開いているように見えた」

セオはしばらく黙り込み、それから小さく息を吐いた。

「……そうですか」

意外そうに、けれどどこか納得したような声音だった。

「リトにとって、この国の出身ではないアリスの方が、居心地がいいのかもしれませんね」

エレオノーラはその横顔を見つめ、何も言わずに微笑んだ。
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