魔法使い時々王子
アリスは隠し部屋を出ると、足早に廊下を進んだ。
「……リト、ありがとう。私、部屋に戻るわね」
振り返る余裕もなくそう告げて、そのまま自室へと急ぐ。
胸の奥がざわついて、呼吸が浅くなっていた。
――早く、シドに知らせなきゃ。
部屋に入るなり扉を閉め、アリスは机に向かった。
引き出しから羊皮紙を取り出し、インク壺を引き寄せる。
手がわずかに震えているのが、自分でも分かった。
(やっぱり……)
ペン先を紙に当てる前に、ふっと思考がよぎる。
父は、このために私をミロに嫁がせたんだわ。
星晶のために――。
その考えを振り払うように、アリスはペンを走らせた。
言葉を選んでいる余裕はない。
見たこと、聞いたこと、感じた不安。
とにかく、すべてを書かなければ。
⸻
その頃――
イスタリア王国、魔法大臣ロザリアの執務室。
窓から差し込む午後の光の中で、シドは机に向かい、書類の束と格闘していた。
署名の確認、報告書の分類、意味不明な古文書の写本。
そこへ、セラが薬草畑から帰ってきた。
「……リト、ありがとう。私、部屋に戻るわね」
振り返る余裕もなくそう告げて、そのまま自室へと急ぐ。
胸の奥がざわついて、呼吸が浅くなっていた。
――早く、シドに知らせなきゃ。
部屋に入るなり扉を閉め、アリスは机に向かった。
引き出しから羊皮紙を取り出し、インク壺を引き寄せる。
手がわずかに震えているのが、自分でも分かった。
(やっぱり……)
ペン先を紙に当てる前に、ふっと思考がよぎる。
父は、このために私をミロに嫁がせたんだわ。
星晶のために――。
その考えを振り払うように、アリスはペンを走らせた。
言葉を選んでいる余裕はない。
見たこと、聞いたこと、感じた不安。
とにかく、すべてを書かなければ。
⸻
その頃――
イスタリア王国、魔法大臣ロザリアの執務室。
窓から差し込む午後の光の中で、シドは机に向かい、書類の束と格闘していた。
署名の確認、報告書の分類、意味不明な古文書の写本。
そこへ、セラが薬草畑から帰ってきた。