その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 「えっと…」
 「まさか、駐車場で顔を合わせて終わりだと思っていたのか?」

 真澄はわずかに片眉を上げて目を細める。

 「そ、そんなことはないですけど…っ」

 からわれていると分かってついムキになって返してしまった。けれど、目の前の男はそれに反応することなく、ただ静かにドアを押さえて待っている。

 「少し話があるだけだ。大した時間は取らせないし、嫌なら断ってくれても構わない。無理に連れ出すのは趣味じゃないからな」

 真澄の言葉は淡々としていて、威圧も押しつけがましさもない。たぶんここで「行きません」と言ったとしても、それ以上引き留めることもしないのだろう。

 それでも、澪の中ではもう断るという選択肢はなくなっていた。

 (話、って……何を?)

 理由は分からない。
 けれど、目の前の人の言葉を、いま拒むことはできなかった。

 澪はほんの少しの好奇心に突き動かされるように、小さく頷いてから助手席に乗り込んだ。

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