その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 「誠実で、実務に強く対応力もある。発注ミスでの対応も的確で責任感も強い。そういう人間にしかこの話は頼めない。君なら、この秘密を共有しながら生活を任せられると思っている」

 「……あ、ありがとうございます……?」

 褒められているのは分かる。
 仕事ぶりを評価してもらえているのも、正直嬉しい。
 けれど――

 「だから君にお願いしたい」

 「お、お願いと言われましても……」

 (それとこれとは話が違いすぎて……!)

 彼は普通の医者じゃない。大学病院の第一外科のエースで天才脳外科医で、将来を嘱望されている人材だ。そんな人の妻が自分に務まるのだろうか。
 そんな澪の内心を見透かすかのように、真澄の目がまっすぐに澪を見つめる。

 「俺は君がどういう人間なのかを見極めて決めた。だからこの話は、君じゃなきゃ意味がない」

 真澄からの言葉は告白のようで、そうではない。
 プロポーズのようでいて、そこまで踏み込んでいないし感情的でもない。

 けれどそこには確かな決意が伝わってきて、澪はただ息をのむ。

 澪は一瞬、スマートフォンを入れたバッグに目をやった。
 自分には、何よりも守りたいものがある。

 (そうだ……そのためなら私は―――)

 二人の間に沈黙が流れた。
 数秒――いや、それよりずっと長く感じる静けさ。

 (こんな提案、誰にでもできることじゃない……この人は本気で言っているんだ)

 今、目の前の人は――私自身を信用できる人間だと認めてくれた。
 そう思うと、胸の奥にうずまく不安も違和感も少しずつ解けていくような気がする。

 「……分かりました」

 そして澪は、そっと顔を上げた。

 「その提案――受けさせていただきます」


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