裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 謝って、こんなことやめなくてはと思うけれど、大きな手が素肌を辿り出した感覚に、うまく言葉が紡げない。
「そうだけど……や、やっぱり……ん、こんなの」
「手遅れだ、もうやめてやれない」
 そう宣言して、彼はついに和葉の胸元に口づけた。
「あ、あ、あ……」
 途端に視界が彼色に染まり、ほかのものはもうなにも入る余地がなくなってしまう。
「和葉……和葉」
 彼の毒に侵されて、彼の声に愛の響きを聞いてしまう。
 自分を昇らせる大きな手が、素肌を辿る熱い吐息が、恥ずかしいところに注がれる視線が、すべて愛の行為だと錯覚させる。
 彼は和葉のすべてだった。
 彼を追いかけ生きてきた。
 悪い人だと知ってもなお、好きで好きでたまらない人。
 ——でも決して愛してはくれない人。
 苛立ち紛れにはじまったこの行為は彼にとっては意味なんてない。
 そこに愛などないはずなのに、それはどこまでも情熱的で、濃厚で、和葉の意識を甘く混濁させる。身体の至るところに落ちるキスに、愛されていると夢を見る。
 偽りの愛に酔いしれながら、あの花が咲いているのを見る。
 どんなに消そうとしても消えなかった彼への想い。たった一度のキスで目を覚まし瞬く間に成長した、あの花が咲いている。
 少し前は蜜を垂らし、沼を作り和葉を引きずり込んだけれど、今はただそこで美しく咲いているだけだった。
 この花はきっとずっとそこで咲き続ける。
 和葉はそう確信する。
 和葉にとっては唯一の花。枯れることも、他の花が咲くこともない。
 彼の熱が心の中心を貫くのを感じながら、和葉はそう思っていた。
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