裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
真実
 幼児が落ちないようにガードが設置された大きなベットの上で気持ちよさそうに樹が眠っているのを確認して、遼一は口もとに笑みを浮かべた。
 彼は寝つきがいい方で、夜は一度寝たら朝まで起きないことがほとんどだと和葉からは聞いている。
 隣のベッドでは和葉が寝息を立てている。髪を梳きそっとキスを落とすとシャンプーの香りがした。触れられてもまったく身じろぎせず深く眠り込んでいる彼女に、遼一は苦々しい気持ちになった。もちろん和葉に対してではなく、自分自身に対してだ。
 彼女が望んだこととはいえ、ここまでではなかったはず。少し無理をさせすぎた。
 ベッドに誘ったはいいものの途中で躊躇した彼女を、遼一は許さず思うままに抱いた。しかも一度は終われずに、繰り返し何度も。
 疲れ果ててそのまま寝てしまってもおかしくなかった彼女が、それでも遼一に手伝ってもらいながらシャワーを浴び樹の隣で寝ているのは、母親としての本能だろう。再会してからの彼女の変化が愛おしかった。
 それにしても、タガが外れるというのはこういうことなのだな、と遼一は自嘲する。
 初めて目にする、彼女からの"抱いてほしい"の合図に衝撃を受け、自分との空白の期間になにがあったのだと邪推して激しく嫉妬した。そして思い過ごしだとわかった時にはもう止められなくなっていた。
 唯一無二の存在に、あんな風に迫られて、冷静でいられる者がどこにいる?
 ましてや、二年以上離れ離れだったのだ。
 順序が逆だ、彼女を抱くのは、ちゃんと話をしてからだとわかっていながら、自制できなかった。同時に、慣れないことをせずにいられなかった、和葉の複雑な心境に思いを馳せて胸が痛んだ。
 遼一の人生の真ん中には、いつも、どんな時も和葉がいた。
 橘家は厳格な家風で、長男である遼一は父から厳しく育てられた。母は優しく惜しみない愛情を注いでくれたが、遼一が小学一年生の時に亡くなった。以降は厳しい父と広い屋敷でふたりきり。たくさんいる親戚は、遼一に対して冷淡だった。会社の実権と財産を巡って父と対立していたからだ。
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