裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
実家を出て子供が生まれた今の服装は、とにかく動きやすさと価格が最優先。今日は量販店のバーゲンで買ったTシャツと薄い色のデニムのパンツ。髪の長さは変わらないが強い日差しを浴びて傷んでいる。けれどトリートメントもせずほったらかしで、無動作にポニーテールにしていた。
とはいえ、彼が自分に気が付かなかったはずはない。目が合った時、わずかだが彼は確かに反応した。
……わかった上であえて知らないふりをした。
「かずちゃん、どうしたの? 疲れちゃった? フードコートまた今度にする?」
「ううん、大丈夫。なんでもない」
ふうっと息を吐いて啓に答え歩き出す。
動揺が少し落ち着くにつれ、今度は胸がムカムカするのを感じていた。
機内で客の親子と話ができ、せっかく幸先のいいスタートを切れたと思っていたのに、それを台無しにされたような気分だった。
空港という同じ場所で働く以上、いつかは目にするだろうと覚悟していたけれど、こんなにすぐに不意打ちで会ってしまうなんて。
——よりによって樹を連れている時に。
言葉を交わすどころか、彼は樹のことはチラリとも見なかった。なんともあっけない実の親子の対面だ。
当然といえば当然で、彼は樹が自分の子だとは知らない。だからさっきの出来事は、彼にとっては、ただ久しぶりに会うかつての婚約者が子供を連れていたというだけの話なのだ。
それに、複雑な気分になるなんてどうかしてる。
偶然会っても無視されるだろうことは予想していた。
あの人は、もともとそういう人だった。
自分に必要ない人物はあっさりと切り捨てられる人。完璧な人生を歩むために、切り捨てた者は記憶から消し去っていくのだろう。
「あーう! おーう!」
天井の上からぶら下がる大きな鯨のようなモニュメントを指差して、樹が腕の中で跳ねるように身体を揺らす。その可愛い仕草に、和葉は少し慰められる。
最悪だと思ったけれど、むしろよかったと、やや強引に気持ちを切り替えた。
会うかもしれないことはわかっていたし、彼の反応も予想通り。
いつ会うかと、気にしながら過ごすよりはずっといい。
さっきはあまりにいきなりで驚いたけど、次があっても、きっともっと冷静でいられるはず。とにかく今は仕事に集中したいのだから、これでいい。
自分の中でそう結論づけて、和葉は足を速めた。
とはいえ、彼が自分に気が付かなかったはずはない。目が合った時、わずかだが彼は確かに反応した。
……わかった上であえて知らないふりをした。
「かずちゃん、どうしたの? 疲れちゃった? フードコートまた今度にする?」
「ううん、大丈夫。なんでもない」
ふうっと息を吐いて啓に答え歩き出す。
動揺が少し落ち着くにつれ、今度は胸がムカムカするのを感じていた。
機内で客の親子と話ができ、せっかく幸先のいいスタートを切れたと思っていたのに、それを台無しにされたような気分だった。
空港という同じ場所で働く以上、いつかは目にするだろうと覚悟していたけれど、こんなにすぐに不意打ちで会ってしまうなんて。
——よりによって樹を連れている時に。
言葉を交わすどころか、彼は樹のことはチラリとも見なかった。なんともあっけない実の親子の対面だ。
当然といえば当然で、彼は樹が自分の子だとは知らない。だからさっきの出来事は、彼にとっては、ただ久しぶりに会うかつての婚約者が子供を連れていたというだけの話なのだ。
それに、複雑な気分になるなんてどうかしてる。
偶然会っても無視されるだろうことは予想していた。
あの人は、もともとそういう人だった。
自分に必要ない人物はあっさりと切り捨てられる人。完璧な人生を歩むために、切り捨てた者は記憶から消し去っていくのだろう。
「あーう! おーう!」
天井の上からぶら下がる大きな鯨のようなモニュメントを指差して、樹が腕の中で跳ねるように身体を揺らす。その可愛い仕草に、和葉は少し慰められる。
最悪だと思ったけれど、むしろよかったと、やや強引に気持ちを切り替えた。
会うかもしれないことはわかっていたし、彼の反応も予想通り。
いつ会うかと、気にしながら過ごすよりはずっといい。
さっきはあまりにいきなりで驚いたけど、次があっても、きっともっと冷静でいられるはず。とにかく今は仕事に集中したいのだから、これでいい。
自分の中でそう結論づけて、和葉は足を速めた。