裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 物心がついた時から、和葉の隣には遼一がいた。
 父親同士が大学の先輩後輩で、家族ぐるみで親しくしていたからだ。
 橘家は、NANAの創業者一族で遼一の父親、橘豊(たちばなゆたか)は現代表取締役である。和葉の父寺坂高弘(てらさかたかひろ)は彼の右腕として、副社長を務めていた。
 遼一の母親が早くに亡くなっていたこともあり、和葉の母は彼をしょっちゅう家で預かっていた。
 橘家は名門だから、母親がいなくても彼の面倒を見る人が手がいないというわけではなかったけれど少々世話焼きなところがある母は、放っておけなかったのだろう。
 四歳年上の彼を和葉は兄のように慕っていて、『りょうくん』と呼んでつきまとっていた。和葉の目から見た彼は、お絵描きでもトランプでもなんでもできるスーパーマンのような存在で、困った時に頼るのは彼だった。彼の方も和葉を妹のように可愛がってくれていた。
『りょうくん、これ、どうしたらいいの?』
『やってあげるよ、かずちゃん』
『りょうくん、どうしよう?』
『大丈夫、ぼくがなんとかするから』
 成長するにつれて家を行き来する回数は減ったが、それでも関係は続いた。
 テストの点数が悪かった時、部活選びに迷った時。
 和葉が頼るのはいつも遼一で、彼の方も都合つけては相談に乗ってくれた。
 そんな彼への親しみが恋心だと気がついたのは中学生の頃。けれど妹以上に見られている自信はなく打ち明けられるはずもない。
 高校卒業時に、思い切って告白しようと思ったのは母との会話がきっかけだった。
 常に成績優秀で見た目もカッコいい遼一を周りが放っておくわけがなく、ちらほらと彼女がいるのは知っていた。
 顔を合わせた際に、母が根掘り葉掘り聞くからだ。それに彼も言葉少なに応じていて、漏れ聞く限りどの相手ともあまり長続きしていなかったようだ。
『まぁ、橘家のひとり息子だもの、仕方がないかもしれないわね』
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