裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 彼の言葉を疑ったわけではないけれど、少し照れ臭かったのだ。
 すると彼は『絶対だ』と言い切った後、しばらく考えてから、付け加えた。
『和葉は俺のすべてだから。俺にとって和葉より大切なものはない。でもそうだな……もし仮に俺が和葉に嘘をついたり裏切る時が来たとしたら、それはその方が和葉のためになる、和葉にとってはそれが幸せだと思った時だろうな』
『ええ? そんなシチュエーションある?』
 ——大切だった思い出は、婚約破棄と同時に封印した。思い出すのがつらかったから。
 それが今、鮮明に蘇り和葉の胸がドクンと大きく音を立てた。
 ……とてもとても大事なことを忘れていたような気がして、文書を持つ手が小刻みに震え出す。
 遼一は、和葉より大切なものはないと語り、もし自分が裏切ったり嘘をついたりするとしたら、それさえも和葉のためだと言い切った。
 彼だって具体的な場面を想定していたわけではないだろうけれど……。
 父にかかった疑いと、突然の彼の裏切り。
 その結果、守られた生活。
 ——もしかして今のこの状況がそうなんじゃない?
 そう思ったと同時に立ち上がる。
 まだすべてが繋がったわけではないし、むしろわからないことだらけだ。でもとにかく彼に話を聞かなくては。
 両親からの訝しむような視線を感じながら、和葉は鞄から携帯を出す
 顔認証でホーム画面が開いたのを見て目を見張る。
 ——そう言えば今日、歩美さんとの見合いの日⁉︎
 もういてもたってもいられず、携帯を握りしめて和葉は両親を見る。
「お母さん、樹をお願いできない? 私、遼一と話さなきゃ」
「遼一くんと……? ……でも」
 遼一と和葉が会っていることを知らない母はわけがわからないといった様子で戸惑っている。
「事情は後でちゃんと話す。とにかく私行かなくちゃ。樹……無理かな? 必要なものは持ってきてあるんだけど」
 樹を見ると彼はご機嫌で広いリビングをうろうろしている。
< 125 / 146 >

この作品をシェア

pagetop