裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 とりあえず結婚までは、NANAで働きなさいと言う父の言葉に和葉は素直に頷いた。両親の望む通りに真面目に勉強して進学もしたけれど、特にやりたい仕事があったわけではないからだ。それならパイロットとして働く遼一を近くで見られる仕事がいいという不純な動機もあった。
 仕事は面白く自分なりに真面目に取り組んだ。働いて給料をもらいそれで社会を知ったつもりになっていた。いつでも遼一と結婚する準備は整った、なんて思っていたけれど、所詮それも周りに用意された上でのお勉強にすぎなかった。全然なにもわかっていなかったのだ。
 それを思い知ったのは、無事に婚約し新生活の準備を進めつついよいよ関係を周囲に発表しようかというところまできて、遼一から一方的に婚約を破棄された時だった。
 一連の出来事のはじまりは、大雨が降ってある日のことだった。夜遅くに帰宅した父が玄関先で倒れ救急搬送されたのだ。昏睡状態が二日続いた後、目を覚ましたが話せず介護が必要な状態になった。
 娘の和葉を大切にしてくれた優しい父を和葉は大好きだったから、とても悲しいけれど生きていてくれたのはよかったと安堵した。これからリハビリを頑張ろうと母と言い合っていた時、遼一からのメッセージを受け取った。
『結婚はなしにしよう。今後のことは弁護士から連絡させる』
 その時は、わけがわからず悪い冗談かあるいは彼のアカウントが乗っ取られたのかと思っただけだった。直接確認したかったが、電話には出てもらえずメッセージにも返信がない。
 数日後、橘家の顧問弁護士と名乗る男性から話し合いの場を持ちたいという連絡を受け取った。出向いた場での遼一の様子は、悪夢を見ているようだった。
 実際、その後何度も夢に出てきて、和葉を苦しめた。
『……理由を……おしえていただけますか? ……もしかして、お父さんの件が関係してる?』
『どう考えてくれてもかまわない』
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