裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
NANAの地上スタッフはさまざまな年齢の社員がいくつかのチームを組んでそこでシフトを回している。自然とチームの絆は深くなる。
退職が突然だったから、チームには迷惑をかけた。
「もちろん。私も急にやめたことをちゃんと謝りたいし。皆元気?」
《元気元気! この仕事、体力勝負だからね。今もだいたい毎日顔を合わせるから、すぐに計画するね。……あ、でも歩美さんだけは、難しいかもしれないな》
「歩美さん? チーム変わっちゃった?」
『歩美さん』こと福原歩美は、チームのマネージャーをしていた和葉の元上司だ。彼女の父親もNANAの取締役だから、和葉と似た立場だがバリバリに仕事ができる人で同期の中で一番早く昇格していた。
彼女の父親福原一慶は、確か倒れた父の代わりに副社長になったと記憶している。
《うん、異動になってさ。今、役員秘書してる》
「え? 役員秘書? どうして?」
地上スタッフから役員秘書室への異動なんて聞いたことがない。あまりにも畑違いの人事異動だ。
《うーん、それがよくわからないんだけど。だからもうあんまり連絡取らなくなったんだよね》
「そうなんだ」
確かに秘書課と地上スタッフは、ほとんど接点がない。
「残念、歩美さんにはご挨拶したかったな」
彼女には新人時代から随分と世話になった。四カ国語を操る有能かつ快活な人で和葉は密かに憧れていた。
麻衣子はしばらく沈黙した後、声を落とした。
《……いずれはわかることだから……今のうちに私から伝えとくね。歩美さん、今は橘さんの秘書をしてるんだ》
歯切れ悪く麻衣子が口にした言葉に、和葉は目を見開いた。
株式会社NANAの創業者一族は、橘家だから、重要ポストに橘姓の人物が何人かいる。
でも彼女がこうやってさん付けで呼ぶのは、比較的近い存在の橘、つまり遼一だ。
「橘さんって……もしかして、橘機長?」
《そう》
「でも、秘書ってどういうこと?」
当たり前だがパイロットに秘書はつかない。
《橘さん、去年取締役になられたのよ。パイロット職にも在籍してるんだけど、飛行時間を資格の更新に必要なギリギリまで減らして、両方やってるって感じかな。本当は取締役に専念したいのかもしれないけど、今パイロット不足だからね。いざという時のためにって感じじゃない?》
「そうなんだ……」
理由を聞いても意外な気持ちは変わらなかった。
ただそうなると歩美の異動は、わからなくないような。
退職が突然だったから、チームには迷惑をかけた。
「もちろん。私も急にやめたことをちゃんと謝りたいし。皆元気?」
《元気元気! この仕事、体力勝負だからね。今もだいたい毎日顔を合わせるから、すぐに計画するね。……あ、でも歩美さんだけは、難しいかもしれないな》
「歩美さん? チーム変わっちゃった?」
『歩美さん』こと福原歩美は、チームのマネージャーをしていた和葉の元上司だ。彼女の父親もNANAの取締役だから、和葉と似た立場だがバリバリに仕事ができる人で同期の中で一番早く昇格していた。
彼女の父親福原一慶は、確か倒れた父の代わりに副社長になったと記憶している。
《うん、異動になってさ。今、役員秘書してる》
「え? 役員秘書? どうして?」
地上スタッフから役員秘書室への異動なんて聞いたことがない。あまりにも畑違いの人事異動だ。
《うーん、それがよくわからないんだけど。だからもうあんまり連絡取らなくなったんだよね》
「そうなんだ」
確かに秘書課と地上スタッフは、ほとんど接点がない。
「残念、歩美さんにはご挨拶したかったな」
彼女には新人時代から随分と世話になった。四カ国語を操る有能かつ快活な人で和葉は密かに憧れていた。
麻衣子はしばらく沈黙した後、声を落とした。
《……いずれはわかることだから……今のうちに私から伝えとくね。歩美さん、今は橘さんの秘書をしてるんだ》
歯切れ悪く麻衣子が口にした言葉に、和葉は目を見開いた。
株式会社NANAの創業者一族は、橘家だから、重要ポストに橘姓の人物が何人かいる。
でも彼女がこうやってさん付けで呼ぶのは、比較的近い存在の橘、つまり遼一だ。
「橘さんって……もしかして、橘機長?」
《そう》
「でも、秘書ってどういうこと?」
当たり前だがパイロットに秘書はつかない。
《橘さん、去年取締役になられたのよ。パイロット職にも在籍してるんだけど、飛行時間を資格の更新に必要なギリギリまで減らして、両方やってるって感じかな。本当は取締役に専念したいのかもしれないけど、今パイロット不足だからね。いざという時のためにって感じじゃない?》
「そうなんだ……」
理由を聞いても意外な気持ちは変わらなかった。
ただそうなると歩美の異動は、わからなくないような。