裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】

ゆれる心

　適温に保たれた鉄板の上、パンケーキを焼くためだけに特注した丸い蓋が置かれている。そっと外すと、もわんと広がる甘くて香ばしい香り。厚みのあるパンケーキは焼きむらもなくきつね色焼けている。
　ん、成功。
　和葉は心の中で拳を握り、それを木製の皿に乗せる。振り返り、カウンターの上のガラスケースに並べられたトッピングをデコレーションするように乗せていく。
　トッピングは二十種類の食材から客が自由に選べるスタイルだ。冷凍マンゴーに、生クリーム、マカデミアナッツにチョコレート……。
　皿をオレンジ色のトレーに並べてカトラリーをふたり分、ドリンクを添えてカウンターの上に置くと、学生と思しきふたり組の女性が歓声をあげた。
「かわい〜！　ＳＮＳと同じだね」
「ねー！　おっきい〜！　いい匂い」
「ハワイではこれで一人前なんですよ」
　和葉が声をかけるとふたりは目を丸くする。
「マジ？」
「さすがアメリカ……」
　ふたりはフードコートの席に座り、パンケーキの写真を撮りはじめる。食べる前にＳＮＳに上げるのだろう。ピースサインを写り込ませているのは、パンケーキの大きさがわかりやすくするためだ。
　わーきゃーと嬉しそうな様子に、和葉はふふっと笑みを浮かべる。
　やっぱりパンケーキのサイズをハワイと同じにしたのは正解だった。