裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
「気をつけてね」
 この公園にはもう何度も来たことがある。はじめは和葉が膝に乗せて一緒に滑っていたが、今はもう自分ひとりの方が楽しいようで、何回も何回も飽きずに滑る。
 見た目はあまり似ていないけれど、こんなところは自分に似ていると和葉は思っている。
 成長してからはお嬢さまと言われていた和葉だが、小さい頃は少し無鉄砲なところがあって、公園では一番面白そうな遊具を見つけては果敢にチャレンジして母をいつもハラハラさせていた。
 遼一が一緒の時は、それを見守るのが彼の役目で『かずちゃん気をつけて』とよく声をかけてくれた。
 ゴーっという音に空を見上げる。ビルとビルの間を緑の航空機が飛んでいく。
「おー!」
 樹が声をあげて、小さな手をぱちぱちとした。
「飛行機だ! すごいね、嬉しいね」
 和葉はふふふと笑みを浮かべる。
 ここのところの樹は拍手がブームで、テンションが上がった時や、嬉しい時に手を叩く。ご飯を食べながら、ぱちぱちとされると、和葉まで嬉しくなってしまうのだ。こんなささやかな幸せを感じられるようになったことが、和葉は何より嬉しかった。
 飛行機が見えなくなると、樹はまた滑り台に夢中になる。和葉は彼から目を離さないようにしながら、背負っているリュックのサイドポケットを開けて中から携帯を出す。夕食やお風呂、寝る時間を逆算してどのくらいここにいられるかを確認しようと思ったのだ。
 画面を開いてドキッとした。
 着信を知らせるポップアップが出ていたからだ。タップすると、電話帳登録をしていない番号だ。けれど、和葉には相手が誰かがすぐにわかる。
 登録するべきか、あるいは消去すべきかまだ答えが出ていない遼一の番号だ。
 この二週間、遼一からの連絡はなかった。
 いや送ってもらった礼をするのは和葉の方なのだから、こちから連絡するのが筋だろう。けれど、樹の父親について疑いを持たれてしまったこと、その状況で会社には連絡するなと釘を刺された状態で、それでも連絡できるほど和葉の神経は図太くはない。このままフェードアウトするのが一番だ。
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