裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
そう言って彼は、自分の後頭部あたりをトントンと人差し指で叩く。意味ありげに眉を上げるその表情に、和葉の頭に古い過去の記憶が蘇った。
彼が後頭部に傷を負った時のことを、和葉はよく憶えている。
あれは和葉が六歳、遼一が十歳の時だった。大きな公園に出かけた際、アスレチックから落下して彼は救急車で運ばれた。
落下した原因は彼の不注意ではない。大きなアスレチックに興奮し自分の身体能力を超える遊具にチャレンジした和葉が足を滑らせて落下しそうになり、それを遼一が咄嗟に受け止めようとして、一緒に倒れ地面の石に当たったのだ。あの時の彼も確か何針か縫っている。
「……だけどそれも、私のせいでできた傷じゃない」
それって慰めになるのだろうか?と思いながらそう言うと、視線の先で遼一がふっと笑った。
「確かにそうだな。だけどまぁ、そんなもんだってことだ」
その笑顔に和葉は目を見開きながら、差し出されたポケットティッシュを受け取った。
「あ、ありがとう」
「ん」
頷いてまた微笑む彼の笑顔に、和葉の鼓動がとくんと跳ねた。
「いきなり泣いてごめんなさい」
「いや、取り乱すのは当然だ。……あっちも泣き止んだみたいだな、よかった」
彼の言う通り、縫合が終わったのか、もう診察室からの泣き声は止んでいた。
診察室の方を見る彼の横顔と二年ぶりに見るさっきの笑顔が重なって、和葉の頭にある疑問が浮かぶ。
婚約破棄の際の彼を見て、和葉は彼はもともとそういう人だったのだと理解した。優しい好青年のようなふりをしながら、本性は打算的で冷酷。自分はそんな彼に騙されていたのだと。
でも思い返してみれば、幼い頃の彼は優しく心が真っ直ぐな少年だった。
アスレチックから落下した際も、怪我をしているのは自分なのに、血を見て泣く和葉を一生懸命慰めてくれた。
『かずちゃん、大丈夫? どこか痛いの?』
後になって母は、駆けつけた時どちらが怪我をしたのかわからなかったと言っていたくらいだ。いつも和葉を心配し、守り、手を差し伸べる彼を、周りの大人たちはまるで和葉の騎士のようだ言っていた。
さすがにあの頃から二面性を隠していたなんてことはないだろうから、成長するにつれて、本音と表の顔を使い分けるようになったのだろう。
……だとしたら、いつから彼は変わったのだろう。
彼が後頭部に傷を負った時のことを、和葉はよく憶えている。
あれは和葉が六歳、遼一が十歳の時だった。大きな公園に出かけた際、アスレチックから落下して彼は救急車で運ばれた。
落下した原因は彼の不注意ではない。大きなアスレチックに興奮し自分の身体能力を超える遊具にチャレンジした和葉が足を滑らせて落下しそうになり、それを遼一が咄嗟に受け止めようとして、一緒に倒れ地面の石に当たったのだ。あの時の彼も確か何針か縫っている。
「……だけどそれも、私のせいでできた傷じゃない」
それって慰めになるのだろうか?と思いながらそう言うと、視線の先で遼一がふっと笑った。
「確かにそうだな。だけどまぁ、そんなもんだってことだ」
その笑顔に和葉は目を見開きながら、差し出されたポケットティッシュを受け取った。
「あ、ありがとう」
「ん」
頷いてまた微笑む彼の笑顔に、和葉の鼓動がとくんと跳ねた。
「いきなり泣いてごめんなさい」
「いや、取り乱すのは当然だ。……あっちも泣き止んだみたいだな、よかった」
彼の言う通り、縫合が終わったのか、もう診察室からの泣き声は止んでいた。
診察室の方を見る彼の横顔と二年ぶりに見るさっきの笑顔が重なって、和葉の頭にある疑問が浮かぶ。
婚約破棄の際の彼を見て、和葉は彼はもともとそういう人だったのだと理解した。優しい好青年のようなふりをしながら、本性は打算的で冷酷。自分はそんな彼に騙されていたのだと。
でも思い返してみれば、幼い頃の彼は優しく心が真っ直ぐな少年だった。
アスレチックから落下した際も、怪我をしているのは自分なのに、血を見て泣く和葉を一生懸命慰めてくれた。
『かずちゃん、大丈夫? どこか痛いの?』
後になって母は、駆けつけた時どちらが怪我をしたのかわからなかったと言っていたくらいだ。いつも和葉を心配し、守り、手を差し伸べる彼を、周りの大人たちはまるで和葉の騎士のようだ言っていた。
さすがにあの頃から二面性を隠していたなんてことはないだろうから、成長するにつれて、本音と表の顔を使い分けるようになったのだろう。
……だとしたら、いつから彼は変わったのだろう。