裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
「どうして、チャイルドシートが……?」
「念の為だ。昨日積み込んだばかりだが、さっそく役に立ったな」
 さらりと彼は言うが、まったく答えになっていない。
 念の為とはいったいどういう意味だろう?
 まさか先日の和葉とのやり取りで、樹が自分の子だと気がついたから?
 いつか樹を乗せることがあるかもしれないと準備していたというのだろうか?
 いやそれはあり得ないと和葉は自分の考えを打ち消した。
 たとえ樹が彼の子だとしても、車に乗る機会はないはず。ほかでもない彼自身が望まないだろうから……。
 だったらなぜ?
 あれこれ考える和葉の視線の先で、彼はチャイルドシートを設置し終えて振り返った。
「どうぞ」
 チャイルドシートの存在の謎はまったく解決してないが、これ以上聞く勇気はなかった。聞けば樹の父親についての話になり、やぶ蛇になりかねない。
 樹をシートに乗せて、バックルを締めようとするが慣れない作業にうまくいかない。
「代わるよ」
 声をかけれて一歩下がると遼一がベルトの長さを確認しながらバックルをカチャンとはめる。目をぱちぱちさせている樹に向かって問いかけた。
「苦しくない? 大丈夫?」
「うー!」
「そうか、よかった」
 優しくにっこりと笑いかけるその姿に、和葉は息を呑んだ。
 柔らかな声音とその笑顔は、婚約破棄前の優しかった頃の彼のものだった。
「今日は、後部座席に座ったら? 隣の方がいいだろう?」
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