裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 和葉は彼に背を向けて、ケトルに水を入れてスイッチを入れた。静かなリビングに、シュンシュンという湯が沸く音だけが響いている。
「インスタントですみません」
 コトリと音を立ててマグカップをテーブルに置くと、遼一が口を開いた。
「ありがとう」
 コーヒーを飲む彼の向かいの席に和葉は腰を下ろした。
「今日はありがとうございました。私ひとりだったらどうなっていたか」
「いや、近くにいてよかった」
 その言葉に、そういえば彼はあの時何をしていたのだろうと今更思う。救急車とほぼ同時に到着したのだから本当に近くにいたのだろう。
 まさか自分たちに会おうとして?
 そんなことを考えていると、遼一と視線が合ってどきりとする。慌てて目を逸らし、急いで口を開いた。
「ド、ドアを開けたままにしてたのがよくなかったんです」
 話題を提供したというよりは、これ以上この話を深掘りしたくなくて話を逸らしたのだ。
 彼が近くにいたのが、和葉に会いにきていたからだとすると、十中八九、先日の話の続きをしたかったのだろう。
「歩きはじめたばかりだから、今はとにかく歩きたいみたいで、家の中でも動き回るんです。今の保育園、園庭がないのでちょっと運動量が足りないのかも」
 彼にとってはまったく興味のない話を意味もなく話し続ける。とにかく沈黙が怖かった。
「公園でも遊具に突進していっちゃうような子だから……」
 そこで遼一がふっと笑ったような気がして言葉を切る。視線を上げると、彼はおかしそうにこちらを見ていた。
「和葉と一緒だな」
「そう……なんです。滑り台とか、何回も何回も滑って。全然帰りたがらなくて」
 遼一がふはっと笑って、くっくと肩を揺らした。
「まんま和葉じゃないか……!」
 和葉は息を呑み瞬きを繰り返す。
 自分の中のなにかが大きく揺れたような心地がした。ドキドキと鼓動が加速するのを止めたくてぎゅっと拳を握り締める。
「外見は全然似てないねって言われるのに、変なところが似るんですね。子供って」
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