裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 動揺しているのを隠したくて早口でそう言うと、遼一が笑うのをやめて、こちらを見る。そして静かに口を開いた。
「外見は、俺の小さい頃にそっくりだ」
 せっかく話を逸らしたのに、やっぱり話題はそれになる。そして和葉はそれを否定できなかった。
 視線を逸らして彼の前に置かれたままのマグカップをじっと見つめる。
 樹の父親が自分かもしれないと疑いを持ってから、今日までの期間に、彼は何かを調べたのだろうか。調べなくてもアルバムを引っ張り出して見ればわかるくらい樹は遼一にそっくりだ。
「あの子の父親は、俺だな」
 たっぷり三十秒迷った末に、和葉はゆっくり頷いた。この押し問答をいつまでも続ける意味はないと思ったからだ。
 別れた女が産んだ子に興味がなくとも、うやむやにできない彼の事情も理解できる。どんなに否定しても彼の疑いは晴れないだろうし、本気で晴らしたいならば誰か別の人物を連れてくる必要がある。当然そんなアテはない。
 遼一が目を閉じてふーっと深いため息ついた。
 いかにも迷惑そうなその反応に、和葉は自分がほんのりと傷ついていることに気がついて心の中で舌打ちをする。
 さっきの樹に対する優しさを見て、もしかしたらと期待していたのだろうか。
 彼が樹の存在を喜んでくれているとでも?
 バカバカしい、そんなことあり得ないのに。
「この前も言いましたが、それでなにかを要求することはありませんし、迷惑もかけません。弁護士さんを通していただければ、合意書を書きます」
 自分でも驚くほど刺々しい声が出る。
 今日、とても世話になった相手に失礼極まりない態度だが仕方がなかった。
「養育費は必要ありませんし、認知も要求しません」
 我ながら、嫌な言い方だなと思うけれど口は止まらなかった。
 おそらく彼はそこが気になっているのだろう。だったら、さっさとはっきりとさせておけばいい。
「将来あなたが結婚しても、バレないようにしますから……」
「そうじゃない」
 低い声で遮られた。
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