裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
「はい」
呼び鈴に答えて玄関のドアを開けると、紙袋を手にしたスーツ姿の遼一が、険しい表情になった。
「相手が誰かも確認せずにいきなり開けるな」
「え? だって、さっきメッセージを送ったから来たんでしょう? だからあなただってわかってるし……」
和葉のマンションを訪ねてくるのは啓か遼一だけだ。
「だからといって不用心だろう。きちんと確認してからにしろ」
眉を寄せて小言を言う彼に、不思議な気持ちになって和葉は瞬きをした。
もしかして心配してくれているのだろうか?
いやもしかして、じゃなくてそうなのだろう。
まぁ樹がいるからね、とまたなにか思ってしまいそうになる気持ちに蓋をして、和葉はドアを開けたまま問いかける。
「それより、渡したいものってなんですか?」
感じが悪いのは重々承知だが、なるべく早く済ませたい。彼との距離感を保ちたいというのもあるが、そもそもこの時間はとても忙しいからだ。
帰ってきてから今までにできた家事といえば洗濯物を取り込んだくらい。これから夕食の準備をして樹に食べさせ、おそらくは汚れるであろうテーブルの始末をして、食器を洗い、お風呂に入って明日の保育園の準備をする。やることが目白押しなのだ。
「できれば中で話をしたいんだが」
遼一の言葉に和葉は一瞬迷うけれど仕方なく頷いた。
彼の渡したいものというのが合意書の類ならば玄関先でやり取りするようなものではない。
引越しの際に挨拶したきり近所付き合いはほぼないが、万が一にでも聞かれて変な目で見られるのは避けたい。
「どうぞ」
「ありがとう、おじゃまします」
招き入れふたりしてリビングへ行くと和室で遊んでいた樹が、トコトコとやってきた。
「あーう?」
遼一を見て首を傾げた。前回会った時のことを覚えているのかどうなのか。どちらにせよ、家にママでも啓でもない人物がいるのが不思議なのだ。
どうしよう……と迷う和葉の隣で、遼一がしゃがみ込み、樹と視線を合わせた。
「こんにちは。お、頭の傷、治ったんだな」
にっこりと笑って挨拶をする。
樹が目をぱちぱちとさせた。
和葉は樹に歩み寄り、しゃがんで彼に声をかけた。相手が誰であれ、樹には、しっかりと挨拶できる子でいてほしい。
「いっくん、こんにちは、できるかな?」
『こんにちは』は、日本に来てから教えはじめた挨拶だ。ハワイではハーイ!と口で言うのが一般的で頭は下げない。誰かに会うたびに促してはいるけれどまだ一度も出来たことはない。
樹は和葉をじっと見た後、遼一に向かって頭を下げた。
「ちゃっ」
遼一が「お」という表情になり、目を細めて笑った。
「いっくんすごい!」
和葉は、思わず樹を抱いて頭をめいいっぱい撫でる。
「上手、上手」
「もうしっかり挨拶できるんだな」
「はじめてだよ! お辞儀は日本に来てからおしえたから。保育園の先生も教えてくれてるんだけど、まだできてなくて。べつに焦ってるわけじゃないんだけど。いっくん、すごい。上手だよ〜!」
呼び鈴に答えて玄関のドアを開けると、紙袋を手にしたスーツ姿の遼一が、険しい表情になった。
「相手が誰かも確認せずにいきなり開けるな」
「え? だって、さっきメッセージを送ったから来たんでしょう? だからあなただってわかってるし……」
和葉のマンションを訪ねてくるのは啓か遼一だけだ。
「だからといって不用心だろう。きちんと確認してからにしろ」
眉を寄せて小言を言う彼に、不思議な気持ちになって和葉は瞬きをした。
もしかして心配してくれているのだろうか?
いやもしかして、じゃなくてそうなのだろう。
まぁ樹がいるからね、とまたなにか思ってしまいそうになる気持ちに蓋をして、和葉はドアを開けたまま問いかける。
「それより、渡したいものってなんですか?」
感じが悪いのは重々承知だが、なるべく早く済ませたい。彼との距離感を保ちたいというのもあるが、そもそもこの時間はとても忙しいからだ。
帰ってきてから今までにできた家事といえば洗濯物を取り込んだくらい。これから夕食の準備をして樹に食べさせ、おそらくは汚れるであろうテーブルの始末をして、食器を洗い、お風呂に入って明日の保育園の準備をする。やることが目白押しなのだ。
「できれば中で話をしたいんだが」
遼一の言葉に和葉は一瞬迷うけれど仕方なく頷いた。
彼の渡したいものというのが合意書の類ならば玄関先でやり取りするようなものではない。
引越しの際に挨拶したきり近所付き合いはほぼないが、万が一にでも聞かれて変な目で見られるのは避けたい。
「どうぞ」
「ありがとう、おじゃまします」
招き入れふたりしてリビングへ行くと和室で遊んでいた樹が、トコトコとやってきた。
「あーう?」
遼一を見て首を傾げた。前回会った時のことを覚えているのかどうなのか。どちらにせよ、家にママでも啓でもない人物がいるのが不思議なのだ。
どうしよう……と迷う和葉の隣で、遼一がしゃがみ込み、樹と視線を合わせた。
「こんにちは。お、頭の傷、治ったんだな」
にっこりと笑って挨拶をする。
樹が目をぱちぱちとさせた。
和葉は樹に歩み寄り、しゃがんで彼に声をかけた。相手が誰であれ、樹には、しっかりと挨拶できる子でいてほしい。
「いっくん、こんにちは、できるかな?」
『こんにちは』は、日本に来てから教えはじめた挨拶だ。ハワイではハーイ!と口で言うのが一般的で頭は下げない。誰かに会うたびに促してはいるけれどまだ一度も出来たことはない。
樹は和葉をじっと見た後、遼一に向かって頭を下げた。
「ちゃっ」
遼一が「お」という表情になり、目を細めて笑った。
「いっくんすごい!」
和葉は、思わず樹を抱いて頭をめいいっぱい撫でる。
「上手、上手」
「もうしっかり挨拶できるんだな」
「はじめてだよ! お辞儀は日本に来てからおしえたから。保育園の先生も教えてくれてるんだけど、まだできてなくて。べつに焦ってるわけじゃないんだけど。いっくん、すごい。上手だよ〜!」