裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 樹も褒められているのがわかっていてにこにこしている。ぷくぷくのほっぺにキスをして頭をくしゃくしゃと撫でたところで、穏やかな表情でこちらを見ている遼一と目が合った。急に彼の存在を思い出して「あ、すみません」と言って口を閉じた。
 ひとりで盛り上がって騒いでしまったのが恥ずかしい。
 これくらいで大袈裟なと思われただろうか。あるいは、真剣な話をしにきたのに時間を無駄にするなと思われたかもしれない。
 そんなことが頭に浮かぶが、彼にはそんな素振りはなく、目を細めて樹を見た。
「保育園は慣れたか?」
「え? ……あ、はい。教えてくれてありがとうございました。すごくいい環境で運動不足は解消されました。……家で動き回るのは相変わらずだけど」
 思いがけず様子を尋ねられて、和葉は改めて礼を言い、ついでに必要ないかもしれない情報まで付け足してしまう。言いながら、こんな話遼一は興味ないのに、と思うけれど彼は笑顔のまま聞いていた。
「そうか。ま、動き回るのはいいことだ」
「本当に助かりました」
「いや、俺はたいしたことはしてないよ」
 そう彼は言うが、単に情報をくれただけではないと和葉は感じていた。電話をかけてから、申し込み、転園までの流れがかなりスムーズだったからだ。おそらくはあらかじめ話を通してくれていたのだろう。
 しかもどうやら、保育料の支払いについては彼が支払うことになっていたようで、和葉には説明がなかった。こちらが払うと説明して手続きしてもらったのだ。
「保育料はこちらが支払うつもりだったのだが」
 案の定それについて、遼一が言及した。
「そこまでお願いするわけにいきません。そんなことしてもらう理由がありませんし」
 かなり突き放した言い方になってしまう。そこまで世話になるのは嫌だった。
 せっかく申し出たのにと、思われても仕方がないが、彼は特に気を悪くした風でもなく眉を上げただけだった。
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