裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 話をするため和葉はダイニングテーブルに座るように促した。和葉も向かいの席に膝に樹を抱いたまま腰を下ろした。
「渡したいものってなんですか?」
 膝に乗せた樹があーうーと声を出して暴れ、可愛い手がペチペチと頬を叩くのを避けながら、和葉は尋ねた。
 彼の持ってきたものが、書類なら、樹の前で話たくないがこの場合は仕方がない。どのみち内容を確認してからでないと判子は押せないから、返すのはまた後日だろう。
「あー!」
「いっくん、下りる?」
 抱っこが嫌なのかと、暴れる樹を床に立たせるがそうすると膝にくっついてくる。要するに退屈なのだ。それにもう七時を回っているから、お腹が空いているはずでもう少ししたらグスグズと言い出す。その前に話を終わらせておきたかった。
 遼一が白い紙袋をテーブルの上に置いた。
「これだ」
「え? これ……ですか?」
 てっきり封筒か書類が出てくると思っていた和葉は、驚いて首を傾げた。
「そう、樹くんに。渡す前に和葉が確認して」
「……樹に?」
 訝しみながら中を覗くと、目に飛び込んできたのはおもちゃのパッケージだった。
 ポップな文字で『わくわくひこうき・くうこうセット』と書いてある。
 NANAの航空機と滑走路のおもちゃがセットになったNANAの公式グッツのようだ。
「今度のうちから発売するものだ。今日もらってきた。年齢が合うかどうかわからないが」
 驚きつつ、とりあえず中を確認する。
 パッケージの写真を見る限りは、細かいパーツはなさそうだ。リアルを追求するというよりは小さな子に安全に航空機を好きになってもらう感じのおもちゃだろう。
「大丈夫そうですけど……でもどうして?」
「この間、ここへ来たとき飛行機のおもちゃがあったから、樹くんが好きなのかと思って」
「飛行機は好きですけど……それでわざわざ?」
「うん、飛行機を好きなのはいいことなんだけど、なんていうか、ALOHA航空の航空機なのが気になって」
 言いながら目を逸らすのは、彼が照れている時の仕草だった。今はほんの少し不満そうにしている。
 その意味するところに気がついて和葉は目を見開いた。
 確かに樹が気に入っているのはホノルル国際空港で買ったALOHA空港の航空機だ。
 NANAのパイロットである彼からしたら"気になる"のだろう。
 だから、NANAのものを持ってきた。
 だとしてもいくらなんでも誰彼かまわず対抗意識を持つ、なんてことはあり得ないから、つまりは自分の息子が、NANAの飛行機ではなくALOHA航空の飛行機を大切にしているというのが、不満だということだろう。
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