裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 そしてそのままご機嫌で遊んでいる。
 人見知りというわけではないけれど、人懐っこい方でもないはずの意外な樹の反応に、驚くと同時に複雑な気分になった。
 温かくなった煮込みうどんを器に盛って、フォークとスプーンを用意する。すぐに呼ばないのは、少し冷ます必要があるからだ。
 頃合いを見て「いっくん、ご飯だよ」と声をかけるが樹は飛行機に夢中だ。
 代わりに遼一が答えた。
「できたって、飛行機と一緒に行こうか。ブーン」
 遼一がおもちゃの飛行機をダイニングにテーブルに着陸させる。キチンと角度をつけて、滑走路代わりのテーブルをしばらく走らせてからゆっくり停止させるというパイロットらしいこだわりだ。
 樹が嬉しそうについてきた。
 抱き上げて椅子に座らせると、促さなくてもパチンと手を合わせ「す!」と言って食べはじめた。
 それを遼一が目を細めて見ている。
「ありがとうございました。助かりました」
「こちらこそ、おもちゃをあげるのを許してくれてありがとう」
 そこで和葉は微妙な気持ちになる。
 この後彼にどうしてもらうのが正解なのだろう?
「樹くんが食べるのを見ててもいいかな?」
 伺うような彼の言葉に、和葉は素直に頷いた。
「どうぞ。……お茶、淹れますね」
 彼がそう言うだろうと思ったし、そう言ってほしいと思っている自分がいるのも事実だった。
 そしてそれは悪いことではないはずだ。
 両親の関係がどうであれ、それは樹には関係ない。遼一が樹を自分の息子として愛しむ気持ちがあるならば、樹にとってはいいに違いないのだから。
 キッチンでお茶を淹れて持っていくと彼とテーブルの角を挟んだところに座って優しい眼差しで見ている。
 樹から届かない場所にお茶を置くとこちらを見た。
「ありがとう。……スプーン、上手に使えるんだな」
「帰国してから急に上手になったんです。ハワイでは叔母と啓と暮らしていて、シッターさんもいたから、ずっと大人がそばにいて、世話をやいてくれていて、自分でやる必要がなかったんですよね。こっちでは私ひとりだから、ぴったりくっついていられない時もあって。だんだん自分でやりはじめたって感じ」
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