裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 そう言って彼は、ダイニングテーブルの角を挟んだはす向かいに座った。
「休みなのに大変だな」
 頬杖をついて和葉の顔をじっと見る。和葉が疲れていないかどうか確認しているのだろう。その仕草に和葉の頬がひとりでに熱くなった。
「ちょっとくらい大丈夫だよ」
「まあ、そうみたいだな」
 あなたこそ、ゆっくり休んだ方がいいんじゃない?という言葉を、和葉はいつものように飲み込んで、パソコンの画面を意味もなくスクロールさせた。
 最近の彼は会うたびにこうやって和葉の体調を気にしている。
 疲れのサインが見られた時は、強制的に家事を取り上げられて、寝るように促される。それだけならまだしも、食器洗いや洗濯などを和葉の代わりにやってしまうのだから居心地が悪い。
 和葉が止めるようにお願いすると『嫌なら早く自分の体調を戻せ』と言って取り合ってくれない。
「コーヒー淹れようか」
「いいよ、仕事続けて。樹が寝ているうちに、やっておいた方がいいだろ? ここからは画面は見えないから」
「でも……」
 そういう問題ではないと思う。
 頬杖をついた彼に見つめられては、ドキドキと胸が高鳴って仕事どころではなかった。
 遼一が眉を上げた。
「見られてたら、気が散る?」
「まぁ、そう」
 すると彼はふっと笑って立ち上がり、リビングのビーズクッションへ移動し、携帯を取り出した。
 開いた窓の外から、通りを歩く人の笑い声が聞こえてくる。
 彼の横顔を盗み見ながら、和葉はふと彼は自分のことをどう思っているのだろう?と考える。
 再会してから今までの日々で、彼の人となりは理解したつもりだ。
 樹に対する愛情や、幼なじみとしての和葉に対する優しさも彼の本当の顔なのだろう。
 一方で、和葉が結婚相手として相応しくないと知るや否や切り捨てた冷酷な一面も持っていて、それはいずれ大企業を背負う立場にいる彼には、必要なことなのだろう。
 思えばNANAの現社長である彼の父親も冷酷だと噂される人物だ。プライベートでの人付き合いはあまりなく、唯一友人だと明言していたのが和葉の父だった。
 パイロットになりたい遼一と、経営の道へ進ませたがっていた父親とは、一悶着あったようで和葉の目から見ても一般的な親子と比べればやや距離があるように思えた。
 ただそれも若い頃の話で、今は取締役になったのだから、徐々に父親の考えを受け入れるようになったのだろう。そしてここぞという時は心を鬼にしてでも正しい道を選ぶ必要があるのだと理解した。
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